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airo vol.2

色彩心理学の魅力とは?  50年以上にわたって研究されてきた末永蒼生さんにインタビュー 代官山MONKEYCAFEにてインタビュー中の末永蒼生さん   色彩心理学はどのようにして生まれたのか? 色彩心理学は、色彩学と心理学とが融合して生まれたものになります。 色彩心理学がどのような経緯やニーズから生まれたのかというと、20世紀半ばのわかりやすい研究例が二つあり、面白いことにこの二つは同じ 1947年に発表されています。 一つはスイスの心理学者マックス・リュッシャーの「カラーテスト」心理学で、もう一つはアメリカで発表されたアルシュウラ&ハトウィックによる『ペインティング&パーソナリティー』(邦訳『子供の絵と性格』)です。 これらが日本にも大きな影響を与え、それをきっかけに医療現場、美術教育、心理相談 などの分野で様々な研究や実践が行われることにつながることになります。 私自身も 1960年代から1980年頃まで日本児童画研究会に所属し共同研究に取り組みました。   末永蒼生さんとairoを開発したROOTOTEのデザイナー   色彩によって感情を解放していくと、潜在的才能が開花していく 現代社会では、ありとあらゆる問題につきまとうストレス。このストレスと私たちはどう上手に付き合っていくのかということが大きなテーマとなっています。 仕事の場面でも、強いストレスを感じているとなかなか自分の能力を発揮しづらいのではないかなと思います。感情・感性・感覚・無意識と直結しているのが色彩。色彩表現によって、自分自身を感じながら心理的バランスを取ること、感情コントロールをすること、自分を調和させていくということがストレスの緩和につながります。 色彩を使って、自分を整えていくことが私たちの行なっているアートセラピーという方法です。   「子どものアトリエ・アートランド」の様子   例えば、私の開いている「子どものアトリエ」に通っていた知的障害児の絵の変化を見ても、その子の創造性を解放していくことで感情の豊かさが鮮やかな色となって表現されていきました。さらに知的能力までが次々に開花していくのです。無条件の自由表現の場で素晴らしい創造的作品を生み出しました。その結果、学習面においても驚くような成⻑を見せてくれました。その子が6歳から10代半ばになるまでのアート体験は、自由な創作行為がいかに人間の潜在的な能力を高めるかということを教えてくれたのです。色彩心理を通じてのケアが人間の可能性を限りなく広げることをこの実践から学びました。その貴重な体験が、年齢や性別、 障害の有無にかかわらずアートセラピーの効果を実感することの出発点にもなったわけです。   知的障害児6歳→14歳の表現力の飛躍   旅と出会いから感じる、色彩コミュニケーション 私の場合はどのようなテーマに興味を持つにしても、「人間ってなんだろう?」と言う問いが常にあって、色彩やアートについて考えるにしても探究の先に「自分を含む人間存在の謎」を探っている気がします。そんな中で私の中に浮き上がってきた人間観は、人類が心を持って以来、常に自己を実現しようとする志向を生きる存在だということです。そこに人間の苦しさも幸福もあり、これが他の動物との決定的な違いなのではないかと考えています。...

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色彩心理学の魅力とは?  50年以上にわたって研究されてきた末永蒼生さんにインタビュー 代官山MONKEYCAFEにてインタビュー中の末永蒼生さん   色彩心理学はどのようにして生まれたのか? 色彩心理学は、色彩学と心理学とが融合して生まれたものになります。 色彩心理学がどのような経緯やニーズから生まれたのかというと、20世紀半ばのわかりやすい研究例が二つあり、面白いことにこの二つは同じ 1947年に発表されています。 一つはスイスの心理学者マックス・リュッシャーの「カラーテスト」心理学で、もう一つはアメリカで発表されたアルシュウラ&ハトウィックによる『ペインティング&パーソナリティー』(邦訳『子供の絵と性格』)です。 これらが日本にも大きな影響を与え、それをきっかけに医療現場、美術教育、心理相談 などの分野で様々な研究や実践が行われることにつながることになります。 私自身も 1960年代から1980年頃まで日本児童画研究会に所属し共同研究に取り組みました。   末永蒼生さんとairoを開発したROOTOTEのデザイナー   色彩によって感情を解放していくと、潜在的才能が開花していく 現代社会では、ありとあらゆる問題につきまとうストレス。このストレスと私たちはどう上手に付き合っていくのかということが大きなテーマとなっています。 仕事の場面でも、強いストレスを感じているとなかなか自分の能力を発揮しづらいのではないかなと思います。感情・感性・感覚・無意識と直結しているのが色彩。色彩表現によって、自分自身を感じながら心理的バランスを取ること、感情コントロールをすること、自分を調和させていくということがストレスの緩和につながります。 色彩を使って、自分を整えていくことが私たちの行なっているアートセラピーという方法です。   「子どものアトリエ・アートランド」の様子   例えば、私の開いている「子どものアトリエ」に通っていた知的障害児の絵の変化を見ても、その子の創造性を解放していくことで感情の豊かさが鮮やかな色となって表現されていきました。さらに知的能力までが次々に開花していくのです。無条件の自由表現の場で素晴らしい創造的作品を生み出しました。その結果、学習面においても驚くような成⻑を見せてくれました。その子が6歳から10代半ばになるまでのアート体験は、自由な創作行為がいかに人間の潜在的な能力を高めるかということを教えてくれたのです。色彩心理を通じてのケアが人間の可能性を限りなく広げることをこの実践から学びました。その貴重な体験が、年齢や性別、 障害の有無にかかわらずアートセラピーの効果を実感することの出発点にもなったわけです。   知的障害児6歳→14歳の表現力の飛躍   旅と出会いから感じる、色彩コミュニケーション 私の場合はどのようなテーマに興味を持つにしても、「人間ってなんだろう?」と言う問いが常にあって、色彩やアートについて考えるにしても探究の先に「自分を含む人間存在の謎」を探っている気がします。そんな中で私の中に浮き上がってきた人間観は、人類が心を持って以来、常に自己を実現しようとする志向を生きる存在だということです。そこに人間の苦しさも幸福もあり、これが他の動物との決定的な違いなのではないかと考えています。...